
環然美がお客様にお菓子と漢方茶をお出しするのには、単なるサービスを超えた深い理由があります。サロンに来ることを「ただのルーティーン」としてほしくない。「いま、自分はどんな季節を過ごし、どんな時間を生きているのか」。環然美は、その感覚にふと気づくための時間を提供したいと考えています。

環然美のお客様の来店周期は、約3ヶ月に一度。それは奇しくも、春夏秋冬、季節が巡るサイクルと重なります。だからこそ、お菓子も季節の移ろいに合わせ、年4回、その姿を変えるのです。
前回とは違うお菓子に出会うその体験は、お客様が自分自身と向き合う時間の中で、季節の空気感を感じるための、ささやかなきっかけとなります。刺激が強すぎたり、美味しさで意識を奪ったりするものではなく、漢方茶と共にリラックスする中で、季節の巡りをそっと体に響かせる。それこそが、環然美のお菓子が届ける「自分と向き合う」ためのおもてなしなのです。


環然美のお菓子作りには、大切にしているこだわりがあります。一つは「ここでしか食べれない」という特別感と、環然美の空間に調和すること。そしてもう一つが、環然美のポスターにも描かれた「循環」という考え方です。私たちはこのブランド哲学に沿ってテーマを設け、3ヶ月おきに季節感を表現するお菓子を考案しています。
例えば、ある夏に「花」をテーマにした際は、エルダーフラワーに着目し、涼しげな琥珀糖に花をちりばめました。またある時は、モダンな和のエッセンスを取り入れ、白味噌とそばの実のチュイールを。「枯れる」がテーマの季節には、カルダモンのかりんとうを。スパイスで体を温め、漢方茶との相性も考え抜いています。

お客様から「これは何を使っているの?」と聞かれるような、初めて体験する味や、素材の組み合わせ。一つひとつ丁寧に手作りされるそれらはすべて、体に良い素材を使い、保存料などは一切加えていません。そして、お菓子を五感で味わう体験は、お客様のその時々の悩みをお伺いして作ったオリジナルの漢方茶と合わせることで完成します。


この特別なお菓子を手掛けるのは、料理家 宮野氏です。「今日と明日の真ん中」という店舗で料理を振る舞う彼女は、環然美のブランディングを手掛ける「Studio Man-Naka」の一員でもあります。ブランドの哲学を構築したチームの一員であり、その感度や背景を誰よりも深く理解する宮野氏だからこそ、環然美の世界観をお菓子という形に落とし込むという、難しい役割を担うことができたのです。
製作はすべて宮野氏が一人で行っています。保存料などを使わないお菓子は日持ちがしないため、月に160個にもなるお菓子を、月2回に分けて作っては納品することもあります。それでも手作りにこだわるのは、コンセプトや想いがストレートに伝わること、そしてブランドの近くにいる自分が作る「安心感」こそが大切だと考えているからです。


お客様からは「販売しないのですか?」という嬉しいお言葉をいただくこともありますが、今のところ商品化の予定はありません。なぜなら、このお菓子は「環然美に来る楽しみ」そのものでありたいから。
唯一無二の空間で、特別に用意された漢方茶と共に味わい、環然美の世界にゆったりと浸かっていただく。その体験全体が、私たちならではのおもてなしです。環然美を訪れるお客様だけが味わえる、季節の巡りと自分自身への気づきの時間。その大切なひとときに、お菓子はそっと寄り添い続けます。



