
看護系の大学を卒業後、大阪で看護師としてキャリアをスタートされたSONYAさん。大学時代からモデル活動は始めていたものの、当時はあくまで「看護師がメインで、モデルは趣味や楽しみに近かったかな」と語ります。食生活も「安いから焼きそばばっかり食べてる」というほど、無頓着だったそう。
そんな彼女の転機となったのが、結婚と、夫の転職のタイミングが重なったことによる「上京」でした。大阪では看護師がメインでしたが、東京ではモデルとしての活動が中心になります。「上京して、自分は『モデルだ』っていう意識に変わりました。趣味の延長でモデルをしている看護師だったところから、仕事としてきちんと向き合うために、食事や健康、自分を整えることに対する『責任感』が芽生えたんです」。

それは「自分への投資」という意識の目覚めでした。大阪にいた頃から始めていたマクロビオティックの食事法を本格的に取り入れ、食にちゃんとお金をかけ、考えて選択するようになったと言います。「体調を崩さなくなりましたし、何より『元気さ』が全然違う。ちゃんと自分と向き合えている、家族を大事にできているっていう実感が大きかったですね」。
プロとしての責任感が、彼女の「今とこれから」を整える、最初の大きな一歩となりました。

上京する前にも、後の彼女の生き方に影響を与える出来事がありました。2018年6月18日に発生した大阪北部地震です。当時は「予定を詰め詰めにして充足感を得ていた」という彼女ですが、地震をきっかけに日々の向き合い方に変化が生まれます。
「仕事で家を空けている間に、また大地震が来たらどうしよう、と。そっちの方が怖くなってしまって。その結果、モノも時間も『余白』を持つようになったんです」。それは「余白を作らざるを得なかった」という状況から生まれた、半ば強制的な変化でした。しかし、その「余白」こそが、彼女に新たな充足感をもたらします。

「余白を持ってみたら、急な相談にも乗れるし、置き去りにしていた日常のこともこなせる。仕事とは違う充足感を得られたんです。その心地よさに気づいた、という感じですね」。
この「余白」の大切さは、出産を経てさらに深まっていきました。
「子供のことでイライラしてしまう時って、子供にイライラしてるんじゃなくて、時間に追われてる自分にイライラしてるんですよね。それって、自分で余白を作っていれば防げること。子供が生まれてからは、さらにその『余白』を意識するようになりました」。
忙しい日々の中で、あえて立ち止まる時間を持つこと。その「余白」こそが、彼女の生き方を穏やかに、豊かに育んでいったのです。


SONYAさんの現在地を語る上で欠かせないのが、環境や未来に対する意識の変化です。その原点は、ご自身の健康への関心から生まれた、ある衝撃的な気づきでした。
「『人って1週間にカード1枚分のプラスチックを食べているらしいよ』という話を聞いて。気をつけよう!と思った時に、プラスチックの使用を減らすことが、地球にいいことにも繋がっていくんだって気づいたんです。」。
地球温暖化と言われてもピンとこなかったことが、「自分に被害がある」と知ったことで、それが「自分ごと」になりました。その気づきは、彼女の暮らしの選択を少しずつ、しかし確実に変えていきました。
「例えば、調理器具を鉄のフライパンに変えてみる。『口に入れるものだから、体にいいものを』という想いで選びましたが、結果として、手入れをしながらずっと同じものを使い続けられています」。
テフロンなどのコーティング加工がない鉄製なら、剥がれ落ちたマイクロプラスチックを摂取してしまう心配もありません。自分の体を守るための選択が、結果として環境負荷も減らすことにつながっていくのです。とはいえ、今あるものを捨ててまでエコなグッズに買い替えるのは本末転倒。だからこそ、買い替えのタイミングで、自分の体にも優しく、より長く愛用できるものを選んでみる。それは、彼女が大切にする「体への配慮」と「モノを大切にする心」が無理なく重なる選択でした。

そんな「無理なく、自分にできる範囲で」というスタンスが、結果として現在共同代表を務めるエシカルプラットフォーム「EF.」の活動の根底にも流れています。モデルの中島沙希さんと共に発信しているのは、まさに彼女自身が暮らしの中で実践してきた「完璧を求めない」というルールです。
「1人が100%完璧にやるよりも、みんなが意識して20%変わる方が、その影響力はものすごく大きい。だから、全部を変えなくてもいい。自分たちの暮らしの中で、楽しく続けられることをシェアしていきたいんです」。
この「完璧を目指さない」という哲学こそが、彼女の暮らしを心地よく、そしてサステナブルなものにしています。


母として、モデルとして、さまざまな役割を持つ今、暮らしの軸はどこにあるのでしょうか。
「『自分軸』を一番大事にしていますね」と、彼女はきっぱりと言います。「子供ができて、第二子も授かり、子供に使う時間は増えたけれど、自分を犠牲にしてると思ったことはないんです。例えば、どこか行きたいところがあったときに、『子供がいるから行けない』と諦めるんじゃなくて、『どうやったら娘と一緒に楽しく行けるかな』って考えるようにしています」。
その「自分軸」を支えているのが、「自分の声を聞く」という習慣です。 「たとえば忙しい日のイベントでも、『本当に行きたいのか?無理してまで行く場所なのか?』と一度立ち止まり、自分に問いかける。その上で、子供との時間や自分の体調、心の余裕といったバランスを整えていきます」。
そんな彼女が、お子様たちに受け渡していきたい価値観。それは、彼女の生き方そのものでもあります。

「『足るを知る』っていうことです。幸せって、遠くにある特別なものじゃなくて、日々の中のちっちゃなことにあると思うんです。それと、『自分を大切にする』こと。結局、自分を大切にしている人が選択するものって、地球にも良いと思うんですよね」。
日々の小さな幸せを感じる心と、自分を大切にする選択。「自分を大切にする」とは、決して抽象的な精神論ではありません。まずは「日々、自分の体に入れるものにきちんと目を向けること」だと彼女は語ります。
結婚式や車といった特別なイベントにはお金をかけるのに、毎日食べるものに無頓着な人は少なくありません。しかし、その違和感に気づいたことこそが、ハレの日だけでなく、自分の体をつくる「当たり前の日常」を大切にするという、彼女の暮らしの軸をつくりました。


インタビューの最後に、SONYAさんのように無理せず、楽しく生きていくためのヒントを伺いました。「難しいですね」と笑いながらも、彼女は言葉を続けます。
「本当に大事なのは、まず『自分の声を聞くこと』を後回しにしないこと。誰かをステキだと思って真似しても、それが自分の心に合っていなければ、どこかで苦しくなって続かないと思うんですよね」。
忙しさや義務感の中では、自分が本当はどうしたいのかが見えなくなることがあります。だからこそ、彼女は「一度立ち止まって、自分の気持ちを確かめる」ことを大切にしています。

では、どうすれば自分の声が聞こえるようになるのでしょうか。彼女はそのための「魔法の言葉」を教えてくれました。
「基本は、『そのままでいいじゃん』って思うことなんです。一回、『まあいっか』って肩の力を抜いてみる。そこから、少しだけ自分に優しくしてあげる。そうやって自分の声に耳を澄ませていけば、自然と無理のない選び方ができるようになると思うんです」。
完璧ではない自分を受け入れる「余白」。他人軸ではなく「自分軸」で選択する、しなやかさ。そして、日々の小さな幸せに気づく「足るを知る」という心。
SONYAさんが見つけた生き方は、瞬間的な美しさではなく、自分自身と丁寧に向き合う時間の中でゆっくりと育まれてきたもの。そこには、未来の輝きへとつながる、CHAINの哲学に通じるものがありました。


